16PK (客、以下16) こんばんは〜。
mima (店主、以下m) お〜〜〜〜〜!!生きてたんだね〜〜!
16 はい、女将さんもご無事で何よりでした…。お店の方は大丈夫でしたか?
m うん、お皿とか少し割れてしまったけど、でも、この通り、大丈夫よ。
16 良かった…。当時、物流が全く途絶えてしまった上、車のガソリンも手に入らない状態だったのにもかかわらず、こうして生き延びることができたのは、女将さんのお陰なんですよ。
m ん?どういうこと??
16 女将さんから、ご飯とみそ汁と漬け物があれば、大丈夫ということを教わらなかったら、私、どうにかなってたのかもしれないですよ、ホント。あと、ちょっとした誇りも持てたし。
m と、いうと??
16 実は、私、あの災害時に一回もスーパーの列に並ばなかったんです。私には必要ないと思って、あのとき本当に必要な人たちに譲ったんです。
m すごいわ!もう、初めてこの店の暖簾をくぐったときの「へなちょこサラリーマン」とは別人ね!!
16 …。へなちょこ…って、また、失礼な…、笑。でも、ホント、自分でも、あ〜〜変わったな〜〜と思います。粗食するようになってから、妙に落ち着いて物事を考えられるようになったっていうのかな…。以前だと、車を運転してる途中、マナー違反する車に対して、ものすごくイライラとかしていたけれど、それも不思議となくなって、今は、「譲ること」が寧ろ自分にとっても、相手にとっても、そして、全体にとっても効率的に物事が働いて、結果的に交通渋滞とかなくなるんじゃないか…とか思えるようになったんです。
m 「タイプB」のいい男になったんだね〜〜、素敵な心がけだね。
(「タイプA」「タイプB」については「
レンスウチョウ」を参照)
16 あ…あれ???ところで女将さん、今夜はなんか、この店には似つかわしくない臭いがただよっていますが…。
m ふふ!!お腹すいたでしょ。ほら、どうぞ、召し上がれ。
16 !!!?女将さん…どうしたんですか??? これ、肉料理じゃないですか??
以前、あんなに、「肉」を蹴散らかしていたのに…(「
不幸な肉を召し上がれ」参照)
m まぁまぁ、食べてみてよ。
16 あ…、はい…。
(ぱく…)
16 うわ!すっごく、煮込んでますね…。口に入れるとやわらかくほぐれていきます。うまいな〜〜。
でも、これ、何の肉ですか?
豚…にしては、脂身少ない感じだし…。
m 実は、これ、
「イノシシ肉」なんだ。
16 !!!
m ご近所に「イノシシ猟」をしている方がいらして、その「おこぼれ」をいただいたのでした。
16 へ〜〜〜!!、初めていただきました。もっと臭いがきつくて、かたくて、まずい、っていう先入観があったんですけど、いや、これは、んまい!!
m でしょでしょ??しかも、いわゆる「自然」に成長しているから、変なホルモン剤も抗生物質も投与されてないし、それこそ、安心、安全よ、笑。
16 確かに…。でも…、そっか…、なるほど…。
m ん??
16 あ、いえ。ほら、うちの実家、農家だって前にお話ししたじゃないですか?
m うんうん、聞いた、聞いた。
16 実は、過疎化で里山が荒れてしまったせいで、山と人里の堺がなくなりつつあって、山からイノシシがおりて畑を荒らすようになったんですよ、特に最近の被害はひどいらしいんですが。
m うん、深刻な問題だよね…。
16 はい。でも、こうやって食べてしまえばいいかなと、笑。なんつったって、うまいし、笑。
m あはは!!!
そうね、スーパーに陳列された赤い固まりには、もはや、それが以前「生命」だったことは想像つきにくいけれど、こうして、命のつながりを感じながらお肉を少しいただくことはココロのご馳走にもなるし、私たちが「いただく」ことによって、農家さんの「にっくき敵」だったイノシシが「安全な食料」にもなりうるってことよね。
16 あ、私の尊敬する槌田先生もこう話していました。
ヨーロッパの人々は「人間は悪い動物だ」という。彼らは過去においては自国の環境を破壊し、近年では元植民地の環境を徹底的に破壊することで自国の環境を維持してきた。その結果が森林率に現れている。
(中略)
しかし、日本人は、人間を悪い動物だとは考えていない。自国の自然が今も豊かなので、別に環境をよくしなければならない理由はない。
(中略)
日本の自然が豊かなのは、祖先の行動が自然の循環と適合していたからである。祖先は悪意もなければ、善意もなく、ただ自分たちの生活をよくしたいという欲望のまま行動したことがよい結果をもたらしたのである。
これを単なる偶然と考えるべきではない。
他の生物がやっていることと同じようなことを人間もする。
それがヒトとして「よい生活をする」ということであると気づけばよいのである。
つまり、草食動物が野原で食事をし、そこに糞尿をばらまくように、人間も自然から自然を得て、廃棄物をそのまま自然に還す。このことを基本とすればよいのである。
(『「地球生態学」で暮らそう』著:槌田敦 から抜粋)
美味しそうと感じていただけたら、うれしいです。
上のリンクをクリックしてください。